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地球のかけら

【第58回】トルコ石(ターコイズ)

2009年11月27日

 12月の誕生石といえばラピスラズリとトルコ石(ターコイズ)。
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※画像はウィキペディアより


ラピスは第11回で早々に取りあげているんだけど、トルコ石は第58回にして今回が初めてです。
 

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※画像はウィキペディアより

そう、トルコ石。

なぜ、今になってようやくなのか。
はい、そうです。
実はこれまでトルコ石を避けてましたぁー!
トルコ石ファンの方、申し訳ない!!

なぜ、避けていたのか。
それはトルコ石にはイミテーションがあまりにも多く、「こんなのはダメ」「あんなのはダメ」っていうばかりの、とってもネガティブな内容になってしまうと思っていたからなのです。

でも、トルコ石はとってもキレイ。
しかもすごく歴史が古い。
アステカ文明やマヤ文明などの古代遺跡からも発掘されているし、エジプトでは少なくとも紀元前3000年の第一王朝以前にはすでに装飾品として使われていた。
さらに紀元前5000年のメソポタミア文明(現イラク)の遺跡からもビーズが見つかっている。
ってことは、7000年以上の歴史があるってことだ。

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※画像はウィキペディアより
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※画像はウィキペディアより

こんなすばらしい石をいつまでも避けていてはいけない。
ここはひとつ、イミテーションのことは考えず「トルコ石」についてだけ考えてみるのが正解だなっと思ったしだいなのであります。
(イミテーションについて知りたい人は「トルコ石 イミテーション」で検索してみてね)


さて、トルコ石といえばどんな石を思い浮かべるかな。
まず色はターコイズブルーと呼ばれる澄んだ青空のような水色にクモの巣のような黒い模様が入っている石。
一般的にはこの印象だろうな。

この水色、濃ければ濃いほど高級とされている。
もちろん天然物だから同じ水色でもムラがあり、少し薄い水色がまだらのように入っている。
この水色は主成分である銅の色なんだけど、不純物として鉄が入ってくるとだんだん緑っぽくなってくる。 

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緑がかったトルコ石はヒマラヤの一部地方で珍重されているんだけど、世界基準でいくと水色の方がより価値が高いとされている。

それから、クモの巣のような黒い模様。これは褐鉄鉱(かってっこう:リモナイト)でできていて「スパイダーウエーブ」とか「メイトリックス」とか「ネット」って呼ばれている。私はスパイダーウエーブがカッコイイと思うんだけど、正式名称ってないみたい。

現在、最も高級とされているトルコ石はアメリカアリゾナ州スリーピングビューティー鉱山産のもので、鮮やかな水色に細かいスパイダーウエーブがふわっと被っている感じのもの。
これが最高級とされているんだけれど、それはあくまでアメリカでのこと。ヨーロッパは逆でスパイダーウエーブのない方が好まれていたりする。
みなさんはどっちが好みかな。


続いてちょっと鉱物的な特徴になるんだけど、トルコ石は銅を採掘する銅鉱床から二次鉱物(にじこうぶつ)として産出する。


二次鉱物?

これまで紹介したことのない言葉なんだけど、トルコ石に限らずあるいくつかの鉱物にはたまに「二次鉱物」という説明がついている。
だから二次鉱物ってなに? って思っていた人も多いんじゃないかな。

とりあえず、二次鉱物があるってことは、その前に一次鉱物があるってことで、よく見かける水晶やトルマリンなどほとんどの鉱物は一次鉱物。
そのなかに黄鉄鉱(おうてっこう:パイライト)や黄銅鉱(おうどうこう:チャルコパイライト)などの金属鉱物がある。この金属鉱物が長い年月、雨風(ホントはもっとヤヤコシイ)にさらされるとその成分が化学変化を起こし違う性質の鉱物になる。これが二次鉱物。
 

身近なところでいうと「鉄」かな。

鉄を野ざらしにしておくと錆びちゃうでしょ。その錆こそが鉄の二次鉱物なわけ。
錆のなかにはちゃんと鉄が含まれているから、そこから鉄を精錬することが出来る。
鉄鉱石はほとんどが錆の状態で採掘されている。純粋な鉄なんて自然界にはほとんど存在していない。

他に有名な二次鉱物というと孔雀石(くじゃくいし:マラカイト)がある。これもトルコ石と同じ銅の二次鉱物。

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鉄と違って銅はキレイな二次鉱物を作りやすいんだと思う。

マラカイトは日本でもけっこうあちこちで採集できるんだけど、日本産のトルコ石については、唯一1994年に栃木県で見つかったという話があるだけで、他は聞いたことがない。

考えてみれば、産出国はどこも砂漠の多い地域だから、高温多湿の日本ではなかなか難しいのかもしれない。
 

ところで、性質が変わっても二次鉱物とは呼ばない石もある。

例えば第29回で紹介した「桜石(さくらいし)」。この石はアイオライトがその形だけを残して溶けてしまい、そこに雲母が入り込んで置き換わった石。だからアイオライトの成分は何も残っていない。
こういうのは仮晶(かしょう)といって二次鉱物ではないからゴッチャにしないようにね。


そうそう、まだ結晶について書いてなかった。

トルコ石は目に見えない非常に細かい結晶の塊でできいるから決まった形がない。
でも、希にではあるけれど肉眼サイズの結晶が発見されている。
 

私もまだ写真でしか見たことがないのだけれど、その結晶はそれはもう信じられないほど美しかった。通常目にするトルコ石とはまるで違う。

色ムラのない均一のターコイズブルー。しかも光が通る。
想像してみてほしい。美しくないわけがない。
しかし、しかしなのである。
その結晶は最大でも1ミリの大きさしかなかった。
んー、誰か人工ターコイズとして大きな結晶を作ってくれないかな。
天然物じゃなくても、それならばかなり嬉しいかも。


そういえば最近、スパイダーウエブのあるトルコ石が店頭から減ってきているような気がする。
ヨーロッパタイプに世間の好みが移ってきたのだろうか。
次はきっとヒマラヤタイプの緑のトルコ石が人気になるかもね。


 

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