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地球のかけら

【第88回】スフェーン

2012年10月 1日

第85回でリビアングラスを紹介したときに、「ツタンカーメン展が全国をまわっているから見に行ってくるといいよ」って言ったのを憶えてる?

そのツタンカーメン展がようやく関東に来たんで、もちろん行ってきました。
とんでもない人出で入場制限までされていたんですが、とってもよかったですよ。
    88_lib06.jpg 
 
これがそのときに紹介したリビアングラスで作られたスカラベが使われている胸飾り。

 
大きさは手のひらを開いたよりちょっと大きいくらいで、スカラベは500円玉
くらいの大きさでした。ちょっと思っていたより小さかったかな。
 
でも、これは副葬品で魔よけの護符ですから、大きさは関係なのです。
その歴史的価値は人類にとって計り知れないものなのです。
いいものを見ることができました。
 
 
それでは本題です。
結晶がくさびに似ていることから、くさび石っていう日本名がついている石。
はいっ、今回のお題はスフェーンです。
 
 88_tt08wiki.jpg 
※画像はウィキペディアより

最近、ビーズになってお店に並んでいるのを見かけるようになったスフェーン。
この石の鉱物名はチタン石(ちたんせき:チタナイト)。
名前のとおりレアメタルであるチタンを主成分にした希少鉱物。とくに大きな結晶はかなりレア。
 
まあ、レアメタルといってもチタンはかなり身近で、いろんなところでお世話になっている。
例えば、金属アレルギーを起こさないからピアスのキャッチに使われていたり、
軽くて丈夫なところからカメラとかのフレームにも使われている。

それに石好きならばきっと一番最初にルチルを思い浮かべるんじゃないかな。

さて、そのスフェーン、私はどちらかというとマニア向けの石という印象があるな。
色はね、黄色、黄緑、緑、褐色の色があって、黄色はイエローサファイアみたいだし、
緑はペリドットみたいでキレイなんだよ。
だから色だけ見ても間違いなく大人気になる石のはず。

 88tt02wiki.jpg  
 
  
 
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 88_tt06wiki.jpg 

※画像は全てウィキペディアより
 
でも、それなのに、なんで一般ウケしづらいマニア向けの石なのかっていうと、
実はこの石、硬度が5しかない。
さらに劈開(へきかい)といって割れやすい方向が2方向もある。

ようするに、「キズつきやすく割れやすい」という、けっこう扱いが難しい石なんだ。
しかも、大粒の結晶は激レアときている。
こういう石はなかなか一般には出回らない。
そこが私がマニアックだと思っている最大の理由。
 
こう言っちゃうと「こんな難しい石、ちょっとね」って思うかもしれないけど、
うちのカミさんはこの石が大好きだったりするんだよね。
 
昔の話なんだけれど、5~6年前、宝石の即売会があって、
2人で見に行ったことがあるんですよ。

そのころはスフェーンなんてまだまだマイナーで、ほとんどっていうか、
ぜんぜん扱われていなかったんだ。
もちろん私たちもスフェーンがあるなんて思っていないから、
まったく意識していなかったんだけど、そこに来ていた個人業者がスフェーンの
大粒の指輪を持って来ていたんですよ。
なんと、それがキレイでさ、濃い黄色のスフェーンだったんだけど、とにかく輝くの。キラめくの。
5カラットくらいあったかな、上から見て1円玉くらいの大きさくらい。

ブリリアントカットのそれは青や赤や七色の光で輝いて、
いやホントこれはダイヤモンドよりすごいんじゃないかって思ったもんね。
 
カミさんそこから動かなくなりましたよ。
その業者はどうやらコレクターだったらしくて、もうマニアックな石ばかり。
話が弾んじゃって、カミさん最後にはボソッと「これ買っちゃおうかな……」なんて言い出す始末。
 
私、思いっきり止めましたよ。
後ろから羽交い締めにするくらいの気持ちで止めましたよ。
 
だってそのスフェーン、70万円って値札がついていたんですもん。
 
それでうちに帰ってきてからいろいろ調べてみたところ、
やっぱり屈折率が高く光の分散はダイヤモンドと同等かそれ以上となっている。
 

さらに「ゴールドのような光の乱反射が起こり、光のイリュージョンに包まれる」なんて
形容されていたりもして、その散乱はハンパじゃない。
 
やっぱり、あのときのカミさんの頭の中はイリュージョンでいっぱいだったんだと思う。
今でもたまに「あれ、欲しかったな」なんて言ったりもしてますけどね。
 
 
ちなみにちょっと余談ですけど、ブリリアントカットというと、ダイヤモンドと
イコールだと思っていたりしませんか?
 
ブリリアントカットというのは全方向から入ってきた光をすべてトップから返すカットの方法。
光を散乱させるために開発されたカットなのです。
ダイヤモンドは散乱が強いから、このカットに適しているというだけで、
ダイヤモンドにしかこのカットを使ってはいけないということじゃない。

だから、ダイヤモンドもブリリアントカットにしなければ光の散乱は起きないし、
ダイヤモンド並の屈折率を持つ石ならどんな石でも光の散乱は起きるのです。
 ゆえに、スフェーンをブリリアントカットにすることはとっても理にかなっているのです。
 
  88bri02.jpg
 
 
この形がブリリアントカット。
上から見ると丸やだ円や四角があるけれど、横から見たら必ずこの形。
 
 
話は戻って、そんな出来事のあったスフェーンですからね、私にはとっても印象深い石なんです。
  
それで、そのマニアックだったはずのスフェーンが最近は宝石店でも
しっかり売られているようになって来てちょっと嬉しいんです。
しかも、ちゃんとキラメキが見られるようにブリリアントカットになって。
 
そして、ビーズにもなっているじゃないですか。
でも、残念ながらビーズではそのキラメキを見ることはできないんだよね。
だから、もしかしたらスフェーンのことを「ちょっと地味な石」と思っている人もいたりしないかな。
 
そういう人は、いやいやそうでない人も、最低一度は宝石店に見に行ってみてください。
これがスフェーンの実力か! って、かならず思いますから。
 
それを見た上でビーズを手に取ってみてください。
「これは、あのスフェーンのビーズなんだ」って、きっと見る目が変わるから。
 
 
 
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