トップページ > 地球のかけら

地球のかけら

【第67回】夏休みの採集

2010年8月28日

8月が終わってしまいました。

8月が終わると夏が終わる感じがして少しさみしいです。
もちろん普段働いている人からすれば、暑いだけの8月なんて、とっとと終わって
早く涼しくなってくれという気持ちなのですが、それでも切なさを感じるのは
幼い頃より刷り込まれてきた夏休みの記憶のせいなのでしょうか。


さて、この夏はカミさんのヒザが治ったこともあって、行ってきました鉱物採集。

お盆に富山県へ里帰りするついでに3か所まわってきました。
ひとつは長野県長和町のガーネット。あとの2か所は岐阜県中津川市の水晶とトパーズ。
って、けっきょくいつも行っているところなんですけどね。
 

でもですね。夏に行ける産地って意外と限られるんですよ。


なぜかというと場所によってはアブの攻撃がハンパないからなんです。
その点、この3か所の産地はなぜかアブがいない。
安心して採集できる数少ない産地のうちのひとつなのです。

しかも今回は今までにない収穫がありました。
どの産地でも十分満足できる石を見つけることができたのです。


まず最初に行ったのは長野県。諏訪湖からほど近い長和町のとある峠。
この産地は採集禁止になっているところがほとんどなのだけれど、
たまたま運良く地主の方と知り合いになり厚意で採集させてもらっている。

ここで採れるガーネットはマンガンとアルミニウムを主成分とした
スペサルティン(満礬石榴石:まんばんざくろいし)。

第23回ガーネット2でも少し紹介している真っ黒いガーネット。

本来ならばオレンジ色のキレイな発色をするスペサルティンなんだけれど、
ここのは発色原因のマンガンが多すぎて赤を通り越して真っ黒になってしまっている。


ただ黒いだけならつまらないガーネットなんだけれど、ここのスペサルティンは
その黒さっぷりが見事な上、36面体のその結晶面がまるでカット研磨したかのように
シャープでなめらか。確実に見ている自分の顔が映り込んでしまうくらい。
それがここのスペサルティン最大の魅力だ。


いやー、ここの採集はつらかった。


標高1500メートルのこの場所はアブも蚊も何もいないかわりに水の冷たいこと。
歩幅くらいの小川の川底をシャベルですくいフルイがけして探すんだけど、
小川に手を入れることができない。ホンの数秒で手がズキズキ痛くなってくる。

それでもガンバってフルイがけをしていると、出ましたよ。今まで採った中で最高の逸品が。


実はここのスペサルティンは非常にキレイな結晶面とは裏腹に、
それがなぜか半分しかないものがほとんど。

うわー、キレイだなーっと思っても、裏返すと結晶面自体が崩れていてボロボロ。
それがここのスペサルティン最大の難点。

67s17a.jpg67s18a.jpg

私たちもこれまで写真のような半分だけのものしか見つけたことがなかった。

ところがついに出たんです、完全体が。
ほんのちょっとのキズはあるけれど、結晶面はほぼ完全に残っている。これなら完全体といっていいだろう。

67s09a.jpg67s15a.jpg

しかも大きさは9.5ミリもある。本当は10ミリの大台に乗ってほしかったけれど、
四捨五入で10ミリってことにしておこう。


翌日、岐阜県中津川市ちんの峠。
今までさんざん南洋美人とか煙水晶を採りに通ったところ。
このコラムでも何度も紹介しているから、またかって思われているかもしれないね。
でもこの産地、行けば必ず何かしらの成果があるから大好きなんだ。


この産地には3つのズリがある。

ズリとは簡単にいうと目的の鉱物がとれる場所のこと。
多くの場合、鉱山が稼働していたときに目的の鉱物を取り除いた残りの土砂でできている。
例えば銅鉱山なら銅鉱石以外は水晶だろうが何だろうが銅に関係ないということで、破棄されてしまう。
だからズリにはそのとき掘り出された鉱物がそのまま残されているのだ。

私たちはこれまでそのうちのひとつのズリでほとんど採集していたが、
今回は別のズリで探してみることにした。
ズリが変わると同じ産地でも水晶のタイプが違ってくるから不思議だ。

67c01a.jpg67c04a.jpg

写真は採集した水晶。
これまでガンバって採集していた南洋美人はひとつもない。

この産地は水がないからフルイがけができない。
片手で持てる小型のツルハシで表面をカリカリしているだけ。
それでもこれだけ見つかるのだから、この産地は何度行っても景気がいい。


そして今回の一番。

67c09a.jpg67c16a.jpg

ダブルポイント(両錐:りょうすい)。
なかなか大きい。
これだけ立派なダブルポイントはなかなか見つけられないと自分では満足しているんだ。
 

ちんの峠での採集は昼までで終了。その足でトパーズ採集に向かう。
トパーズを探すのはちんの峠の近くを流れる川。いつも行っている川とはちょっと別の川に行ってみた。
トパーズの探し方は長野県のスペサルティンと同じ。川底の砂をフルイがけするだけ。

しかし、ちょっと違うところがある。それは川のどこでもいいというわけではなく、
トパーズのたまるポイントがあるということ。
その場所を見つけられなければいくら探してもトパーズは1個も出てこない。

67t01a.jpg67t04a.jpg

そこで採れたトパーズ。
小さめだけれど、ぜんぶで279個。
これだけ採れれば文句ナシ。

というわけで、とっても充実したお盆休みだったのですが、その後の富山県はずっと雨。
あいかわらず鉱物採集の時だけはお天気運のいい私たちでした。

 

本文の終わりです
ページの終わりです
先頭にもどります
オンラインショップはこちら