トップページ > 地球のかけら

地球のかけら

【第55回】アラゴナイト

2009年9月 1日

  55aragonite1wiki.jpg
 
※画像はウィキペディアより

9月の守護石といわれている霰石(あられいし:アラゴナイト)のファンは多いよね。
六角形の柱状結晶が何本も放射状に伸びている結晶は、いかにもアラゴナイトって感じでとてもかわいい。

アラゴナイトの色っていうとビーズアクセサリーをやっている人は
ハニーイエローを思い浮かべることが多いと思う。

でも、純粋なアラゴナイトはまったくの無色。宝石質のものだとまったくの無色透明なものもある。

55aragonite-cutwiki.jpg
※画像はウィキペディアより
 

確かにキレイ。キレイですけどここまで無色透明だと、
別にアラゴナイトでなくてもいいんじゃない? 
って思っちゃったりして。


やっぱりアラゴナイトはハニーイエローとか、一番上の写真のような赤褐色が
標準って感じがするなあ。それがアラゴナイトの個性だと思ったりしているんだ。


さて、どちらかというと手に入りやすいこの石には大きな2つの秘密がある。


今回はそれを紹介して見たいと思います。 が、その前にもう少しアラゴナイトの詳細について。 

アラゴナイトの主産地はスペインのアラゴン州。そのまんまその地名から名前がつけられた。
日本名の霰石は日本で最初に発見されたとき、小さくてコロッとした形だったことから、
霰に似ているという意味で、こちらもまたそのまんま命名された。

赤褐色の原因は微量に含まれる鉄。これの含有量によって
ハニーイエローになったり赤褐色になったりしている。
中には鉄でない別の元素が入り込んでブルーになったものもある。

55agonite2wiki.jpg
※画像はウィキペディアより

このブルーは涼しげで気持ちいいです。

この写真のアラゴナイトは結晶ではなく塊だけど、これはゆっくり沈殿してできたと考えられる。
だから一色にならずメノウやインカローズのように縞模様になっている霰石もある。
 

55aragonite3wiki.jpg
※画像はウィキペディアより


さて、それでは秘密ってのをいってみましょうか。

まず、ひとつめ。
これは、第6回の記事でもちょっと紹介しているから、知っている人も多いかな。
それはアラゴナイトは炭酸カルシウムという成分からできていること。
 

先にも書いたように日本では最初に鍾乳洞で見つかっている。
鍾乳洞はその全体が炭酸カルシウムでできている洞窟のこと。


そう、上から下からにょきにょきはえている鍾乳石とアラゴナイトは同じ石なのだ。


炭酸カルシウムが沈殿して固まっていくと鍾乳石。結晶になるとアラゴナイト。
そういう関係がある。鍾乳洞でアラゴナイトが発見されたのは当然といえば当然だ。


さらに、炭酸カルシウムでできている石は鍾乳石の他にもたくさんある。

有名どころは真珠、珊瑚、大理石。

そしてなんといってもカルサイト(方解石:ほうかいせき)も同じ炭酸カルシウムでできている。


カルサイトも結晶ならアラゴナイトも結晶。
両方とも同じ石にしたらいいじゃないかと思われるかもしれないけれど、鉱物的にはしっかり区別されている。


じゃあ、どこが違うのかというと、結晶の種類が違うのだ。


結晶とはその石を造っている成分の分子が規則正しく並んでいる状態。
その並び方を結晶系といって大きく6つに分類されている。
 
そのなかでカルサイトは六方晶系(ろっぽうしょうけい)という結晶の種類になる。
(※正確には三方晶系なんですけど、ややこしくなるんで気にしないでください)

これは結晶の断面が六角形になりやすい結晶で、水晶も同じ種類の結晶。
 

一方、アラゴナイトは斜方晶系(しゃほうしょうけい)という種類の結晶になっている。
この結晶は断面が平行四辺形になりやすい。トパーズが同じ斜方晶系。

そう、カルサイトとアラゴナイトの違いはこの結晶系の違いしかないのだ!


そして、結晶つながりで2つめの秘密。

ちょっと写真を見てください。

55aragonite4wiki.jpg
※画像はウィキペディアより


これはアラゴナイトの結晶。

どう見ても断面が六角形でしょ。

「六角形なら六方晶系だろ。アラゴナイトは斜方晶系だから
平行四辺形になるっていうのと矛盾してるじゃないか」と、思いませんでした? 思ったでしょ。

そう、そこにこそ2つめの秘密があるのです。


実はこの六角形、平行四辺形が3つくっついて六角形の形になっているのです。
どういうことかわかりにくいと思うので、図を描いてみました。

kessyou1.jpg

左図が斜方晶系の単結晶。しっかり平行四辺形。
中図は単結晶が3つくっついているところ。
右図が六角形になったところ。


こんな感じなんです。

このように平行四辺形の結晶が3つくっついて六角形になっている場合、こ
の状態を疑似六方(ぎじろっぽう)と呼んでいます。

そこでです。
結晶が3つくっついているというところに注目して欲しいのです。
 

これまでにもある決まり事を持って結晶が2つくっついているものを双晶(そうしょう)と呼んで、
さんざん「めずらしい」っていってきたじゃないですか。

この結晶は六角形になるという決まり事を持って3つの結晶がくっついているんです。
3つ子の双晶なのです!
このような双晶を三連双晶と呼んでいます。


どうです? アラゴナイト。 なかなかすごいヤツでしょう。


アラゴナイトの結晶を見かけたら、手にとって必ず確認してください。
断面に3つの平行四辺形がくっついた跡の見える結晶が確実にあります。


おしまいにひとつ。日本でもっとも有名なアラゴナイトの産地。
それは石川県珠洲(すず)市。能登半島の先端近く、富山湾側にある
この市の海岸にアラゴナイトが産出します。

海岸に打ち上げられるのではなく、波打ち際の岩壁にアラゴナイトが結晶で含まれているのです。
しかも、紫のアラゴナイト。写真でしか見たことないけど、すんごくキレイだった。

55koiji.jpg
ちなみにその海岸の名前は恋路海岸。


海岸名すらロマンチックだー。
 

本文の終わりです
ページの終わりです
先頭にもどります
オンラインショップはこちら