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地球のかけら

【第19回】インカローズ

2007年12月 1日

水晶プレゼントにたくさんご応募いただきありがとうございました。
残念ながら外れちゃった方、ごめんなさい、次こそ必ずあててくださいね。
そして、見事に当選された方、おめでとうございます。水晶の調子はいかがですか。お店では売っていないエレスチャルのような変わった形の水晶もあって、きっと楽しんでいただけていると思っています。

ところで、私たちは抽選にはまったくタッチしていないんで、どなたが当選したのかわからないんですね。
だから、「当選したよー」ってメールを直接何人かの方からいただいたときは、素直に嬉しかったです。
なんていうのかな、顔が見えるって感じかな。
「あのとき採ったあの水晶が今はこの人の手元にあるんだ」って思うと、「繋がってるな」って感じることができて、ちょっとジーンときちゃいました。

それから、応募していただいたときに感想も書いていただいたんですけど、あのう、……苦情とかも書いてもらっていいんですよ。
ほとんどがほめてくださっている内容で、それはそれで嬉しいんです。ですけど、「つまんない」とか「ここ間違っている」とか「もっとこうしろ、ああしろ」というご意見も絶対欲しいんです。
ぜひよろしくお願いします。私に直接メールを出してもらっても、ぜーんぜんかまいませんからね。
メールアドレスはこちらです。
tatsu348@hotmail.co.jp
まってますよ!

さて、前置きが長くなってしまったところで、ようやく今日の本題。
感想と同時に「大好きな石」とか「気になる石」とか「特集してもらいたい石」なども書いていもらったんだけど、そのなかである石がダントツ人気でした。

もちろん、水晶とかガーネットとかたくさんありましたよ。でもズバ抜けている石があったんです。

その石とは?!

インカローズ!!

チャンチャチャーン!
カミさんとふたりで「キターッ!」って叫んでしまいましたよ。

というわけで今回はインカローズについてです。
まず、最も一般的な名前である「インカローズ」はあくまで商品名だということを知っておこう。
正式名称は「ロードクロサイト(菱マンガン鉱:りょうマンガンこう)」。日本名のとおりマンガンを主成分としており、薄いピンクから濃い赤までの色を持っている。

19-ro-dokurosaitokesshou.JPG

 

お店で売られているインカローズは2種類あって、縞の「あるもの」と「ないもの」。
どちらもキレイだよね。

で、「縞のあるものより、ないものの方が高価なのはなぜ?」という質問が多かった。

んー、確かに。
一般的には「ない」ものより「ある」ものの方が高い印象なんだけど、インカローズはそうじゃない。「ない」ものの方が高い。しかも圧倒的に高い。10倍以上違ったりする。
もちろん、この2種類は同じものだよ。違う石を同じ名前で呼んでいるわけじゃない。

なぜか。

それは、縞のない方が「結晶」だからなのだ。

岩石のスキマに元になる成分が沈殿し、固まっただけのものが縞のあるタイプ。
高い圧力下で長い時間をかけてゆっくり成長していったものが、結晶である縞のないタイプ。
ルビーやサファイアなどの宝石と同じでき方だ。この色と透明度なのだからインカローズの結晶はまさしく宝石だ。
しかし、残念ながらこの石は硬度が低かった。
宝石になる条件のひとつ「硬いこと」がこの石には欠けていた。
「硬いこと」の基準はモース硬度で7以上。それに対しインカローズは4。
柔らかいといわれている蛍石(フローライト)と同じなのである。

もし、7以上の硬度があればダイヤモンドやルビーと並んで確実に宝石店のショーケースに並んでいたに違いない。
 
そんなインカローズの結晶、上質のものは100円玉くらいの大きさで15万円ほどもしてしまう。
簡単に手を出せる金額ではないけれど、この石は宝石と同じなのだ。


産地でいうと、世界中でインカローズは採れている。有名どころはアルゼンチン、ペルー、メキシコ、南アフリカそしてアメリカかな。特にアメリカからはものすごくキレイな結晶が採れている。

日本でも何か所かにマンガン鉱山があって、インカローズが見つかっている。私が知っているのは北海道、青森県、秋田県、岩手県、茨城県、石川県、愛知県……。
けっこう多いな。
特に茨城県ではキレイな結晶が見つかっている。

で、石川県なんだよね。しかも調べてみたら金沢市なんだ。「おおっ、近い。行くぞっ!」って思ったんだけど、徒歩3時間なんだって。
でさ、ウチらってアウトドア派って思われることが多いんだけど違うんだよね。欲しい石が山にしかないから外には出るけど、本当ならコタツのなかでミカン食べながら石を眺めていたいインドア派なんだ。
よって、3時間って聞いただけで挫折しました(根性無しめとお笑いください)。


ここまで、インカローズについて話してきたけど、マンガンを主成分にしている宝石級の石はそれだけじゃない。
有名どころがあとふたつある。
バラ輝石(ロードナイト)とパイロクスマンガン石。

19-barakisekikesshou.JPG

 

19-pairokusumangankesshou.JPG

 

バラ輝石はビーズにもなっているからなじみ深いよね。この石も結晶でないことの方が多い。正確にいうと微細な結晶しか育たず、それらが固まりになっている場合がほとんど。
まれに大きく成長した結晶が見つかることもある。それは真っ赤ですばらしくキレイ。しかし、希少すぎて店頭に並ぶことすらめったにない。目に見える大きさの結晶が手に入ったら大ラッキーだろう。
 
そして、さらに希少な石がパイロクスマンガン石である。私たち鉱物ファンは略してパイマンって呼んでいる。
ルビーよりも美しい赤を持っているといわれているこのパイマン、当然のようにめったに結晶にならない。なんていうのは序の口で、それを産する産地すら世界にほとんどない。

ならばいったいどこで産出するのか。

日本だ。

愛知県設楽群設楽町にあるそこに、私たちはこれまで何度も行っている。しかし、小さなものしか見つけられず、まともに採集できたことは一度もない。
見かねた石友からちょっと大きめのものをいただいて持っているだけである。
世界的に希少なパイマン。ちょっとやそっとで採集できるほど楽な石ではない。
採集できないことを残念がるより、その産地が日本にあることを幸せだと考えるべきだろう。


ここまで、「インカローズの結晶は美しい」とか「バラ輝石の結晶は美しい上に希少だ」とか「パイマンは産地すらめったにない超希少石だ」なんて書いてきたけど、じつはこの3つほとんど見分けがつかないんだよね。
ていうか、ちゃんとした化学分析をしなければまったくわからない。インカローズだけが結晶の形がちょっと違うくらいかな。日本名で「(菱)マンガン鉱」というくらいだから菱(ひし)形の結晶面を持っているんだ。
でも、それ以外はよくわからない。どれもいい色でウットリするばかり。もう区別なんかしなくてもいいんじゃないかと思っちゃうくらいだよ。

さて、長々と書いてきたインカローズ特集だけど、最後にどうしても知っておいてほしいことがある。
それはこれらの石がいつのまにか真っ黒になってしまうこと。
これはマンガン鉱物の宿命で、表面が酸化してしまうことで起きる現象。けっこう短期間(数年)で黒くなってしまう。

でも、心配する事なかれ。元に戻す方法はちゃんとある。
その方法とはレモンだ。レモン汁をかけると一気に還元され元の鮮やかな色が蘇る。
うちのカミさんはいちいちレモンを切るのがめんどくさいという理由でポッカレモンを使っている。
夜、石をコップに入れそれが全部沈む程度にポッカレモンを入れておくと、翌朝には真っ赤っかになっている。
この方法、ものすごく安全で簡単だから、すでに色がくすんでいる結晶を持っている人は試してみて。
ただし、黒いところが全部なくなる可能性があるから、結晶だけを赤くしたい人は綿棒を使ってチョンチョンとつけるといいんじゃないかな。そこあたりは工夫してみてね。 

(※真っ黒、というのは母岩の事を指しています。効果が分かるのは真っ黒に黒ずんでいる場合ですので、少し黒ずんでいるかな?という状態では分かり辛い可能性がございます。また、ビーズやタンブルなどの状態では、同じような変化はおこらない可能性がございますので、ご確認くださいませ。)

いよいよ冬。インカローズの赤い色がポカポカ暖かそうです。みなさんお風邪など召されませぬようご自愛くださいませ。
それから、このコラムを読んでくれている男性諸君。クリスマスですよ、クリスマス。プレゼントにインカローズの結晶なんていいかもよ。

 

 

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