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地球のかけら

【第91回】結晶系

2013年4月 1日

今回はちょっとむずかしそうな感じがするのですが、それは気のせいです。
あまりたいしたことは言っていません。

これまでもたまーに出てきた結晶系(けっしょうけい)という単語。
結晶系ってなんじゃろな。 と思っている人もきっといるんじゃないかな。

結晶系というのは鉱物をつくる分子の並びを分類分けしたもの。
結晶には必ず複数の軸があって、結晶軸と呼んでいるんだけれど、
その結晶軸にあわせて分子が並び結晶面が形づくられる。
よって、結晶系が同じなら、ぜんぜん違う鉱物でも基本的に同じ形になる。

ここで大切なのは結晶軸の本数と長さ、そしてその角度。
結晶系はこの3つに注目してもらえば、まあオッケーかな。
この3つで結晶の形が基本的に決まってしまうというところがミソなのですよ。

石好きにとって結晶の形って重要でしょ。
だから、結晶の形を決める結晶系を知っていることは、けして損にはならないと思うよ。

で、それらは全部で6種類あって、すべての鉱物は必ずそのどれかに分類される。
今回はその6種類を簡単に紹介します。

ところで、前回のこのコラムを読んでくれた人は、あれ? と思ったりしたかな。
そう、確かに私は前回「結晶系は7種類ある」と書いた。
それなのに今回は6種類と書いている。
6種類なのか7種類なのか、理由は後ほど。


先ずは結晶系の名称から。

○等軸晶系(とうじくしょうけい)
○正方晶系(せいほうしょうけい)
○斜方晶系(しゃほうしょうけい)
○単斜晶系(たんしゃしょうけい)
○三斜晶系(さんしゃしょうけい)
○六方晶系(ろっぽうしょうけい)

とりあえず、この6種類ということで話を進めるよ。

○等軸晶系
結晶軸 3本
軸の長さ 3本とも同じ
角度 3本が90°に交わっている。

91-01.jpg

この等軸晶系が結晶系の中でも一番シンプル。
何てったって、わかりやすい。縦横高さがみな同じ長さだから、
それぞれの面が結晶の中心から同じ距離にある。

・この系に属する鉱物
ダイヤモンド、パイライト、ガーネット、スピネル、フローライト、マグネタイト、ガレナ、ラピスラズリなど
91-1.jpg

どう、みんな同じような形をしているでしょう。
コロッとしているところが特徴かな。


○正方晶系
結晶軸 3本
軸の長さ 3本のうち2本だけが同じ長さ。高さ方向の1本だけが違う
角度 3本が90°に交わっている

91-02.jpg

なぜ、1本だけ長さが違うのかといわれても、だってそうなんだもん。 
としかいえないところが悔しい。
強いていうなら自然がそれを選択したというところか。
でも、だからこそ馴染みのある長細い結晶が生まれるのだ。

・この系に属する鉱物
スキャポライト、アポフィライト、ルチル、キャルコパイライト、ジルコンなど
91-2.jpg
断面が四角くて縦長。
これのイメージは牛乳パック。開け口の部分を無くしてみたらこの形。
写真のアポフィライトは頭の部分だけだけど、正しくそうでしょ。


○斜方晶系
結晶軸 3本
軸の長さ 3本とも違う
角度 3本が90°に交わっている

91-03.jpg

上の2つの晶系とあわせて、ここまでが90°に交わっている結晶軸を持っていることが特徴。
直角に交わっているのに、なぜ斜なのか。 

・この系に属する鉱物
トパーズ、セレスタイン、アラゴナイト、スティブナイト、サルファー、アレキサンドライトなど

91-3.jpg

横から押されて歪んでいるように見える結晶が多いかな。
それは結晶軸の長さが3本とも違うからこそで、断面が正方形から菱形まである。
たまたま2本が同じ長さになったら、正方晶系と区別がつかないのでは?


○単斜晶系
結晶軸 3本
軸の長さ  3本とも違う
角度  3本のうち2本が90°で、残りの1本が斜めに交わっている

91-04.jpg

1本だけが斜めに交わっているって、何だかすごくバランスが悪い感じがするんだけれど、
でもそうなんだからしかたないよね。 って、ちょっと投げやりな印象を持っているワタクシです。

・この系に属する鉱物
レピドライト、サニディン、ジプサム、スフェーンなど
91-4.jpg
この結晶系の鉱物自体あまりみかけない。
ジプサムは巨大な結晶が発見されているけれど。その他は本を見てもあまり載っていない。
ということである意味レア鉱物。


○三斜晶系
結晶軸 3本
軸の長さ 3本とも違う
角度 3本とも斜めに交わっている

91-05.jpg

一番フリーダムな結晶系のような感じ。
でも、これはこれでこの結晶系にそった形をはみ出すことはない。

・この系に属する鉱物
ロードナイト、ターコイズ、カイヤナイト、パイロクスマンガン石、アマゾナイト、ラブラドライトなど
91-5.jpg



この晶系の鉱物も数が少ない。
さらにいうなら大きな結晶に育つものも少ない。ターコイズとかアマゾナイトなんか
結晶が細かすぎてひとかたまり。形なんかわからないよ。
単斜晶系の鉱物と並んでレアであること間違いなし。


○六方晶系
結晶軸  4本
軸の長さ 3本が同じ長さで1本だけがちがう
角度 3本が120°で交わり、その3本に対し高さ方向の1本が90°に交わっている

91-06.jpg

さあ、来ましたよ。もっとも馴染み深い六方晶系ですよ。六角柱ですよ。
石に詳しくなくても、結晶というと誰もが六角柱を想像するのは水晶のおかげ
なんだけれど、そのせいで結晶はみんな六角柱だと思っている人が多い。
そのくらい身近な結晶系なのに、上記の5つに比べこの六方晶系が一番ヤヤコシイ。

何てったって結晶軸が4本もある。
その中で同じ長さの3本が同一平面上において120°で交わる。これで六角形が形づくられるわけ。
そして残りの1本がそれに対して垂直に伸びることによって六角形が六角柱になるっていうことだ。

・この系に属する鉱物
トルマリン、アクアマリン、水晶、アパタイト、ロードクロサイト、カルサイト、コランダム、ヘマタイトなど
91-6.jpg

一番なじみの深い結晶が一番特殊な結晶だったというわけ。
でも、鉱物としてみると一番種類が多いから、ぜんぜんレアじゃないところが
何だか偉ぶってなくていいよね。

そして、ここからが問題。「六方晶系はヤヤコシイ」の最大のヤヤコシイ。

それは三方晶系(さんぽうしょうけい)をこの中に含んでいるということなのだ。

三方晶系。それは7番目の結晶系。
水晶もトルマリンもカルサイトもコランダムもヘマタイトも三方晶系である。
しかし、「六方晶系(三方晶系含む)」と表されているときが多く、三方晶系は六方晶系の
一形態に過ぎないとされてきた。

ところが、最近は「三方晶系は六方晶系ではない」とする意見が増えてきている。
にもかかわらず、本によっては水晶を六方晶系としていたり三方晶系
としていたり、まったく統一されていない。

冒頭でいった結晶系は6種類なのか7種類なのかというのは、
この三方晶系を六方晶系に含めるのか、それとも独立させるのか、ということなのです。
鉱物学会さんのほうでもちゃんと決まってないみたいですねえ。

☆三方晶系とは
本を何冊も読んでみたのだけれど、どうも私の頭ではうまく理解ができないのですよ。
ある本には「六方晶系を半分にしたものが三方晶系」と書かれていたりするけれど、
どう半分にしているのかがわからない。
じゃあ、3分の1にしたら二方晶系? ←んなバカな。
またある本には「六方晶系ならば隣り合った面は同じにならなくてはいけない。
それに対し三方晶系はひとつおきに同じ面が現れる」と書かれている。
これは、アクアマリンなどのベリルは結晶の断面がどれもほぼちゃんとした六角形なのに対し、
水晶はちゃんとした六角形なんてほとんどなく、たいていは一面おきに同じ大きさの面が現れる。
それこそが三方晶系の証ということらしい。

91-56.jpg

左は六方晶系であるアクアマリンの結晶。
右は三方晶系である水晶の結晶を真上から撮ったもの

確かに両方六角形ではあるけれど、水晶の結晶はまるで三角形に見える。
一面おきに面の大きさが極端に違っている。三方晶系でなければこうはならないそうだ。

みなさんは含む派? それとも独立派? 


さて、長々と引っ張ってきた結晶系のお話しもそろそろ終了。
あらためてそれぞれの結晶系の鉱物を見てみると、色がついて透明で、
わあキレイとなるのはたいてい等軸晶系か六方晶系。ま、これは私のイメージだけどね。

それから、鉱物は天然のものだから、頭が欠損していたり、
結晶が正しい形から大幅にずれたりしているから、正しくこれというものはなかなかないよね。
欠損していず、これが正しい形ですという結晶がもしあれば、
結晶図とかに照らし合わせてもわかりやすいのだろうけれど、
そんなものは100パーセント有り得ないから、なかなかわかりにくい。
でも学者さんとかはその天然の結晶を見て、これがこっちにずれている、
これがこっちにずれている、だからこれは○○晶系だとわかるらしい。

それでも、ひとつの石をたくさん見ていると、多少形が歪んでいても、
どれがどうずれたかが素人なりにわかるようになってくる。
その石にとにかくたくさん馴染んで慣れることカナ。

トパーズなど私たちはたくさん採ったから、どんなに歪んでいても、
ほんの欠片でもトパーズってわかるようになったよ。トパーズだけだけどね。


それにしても、不思議だと思わない?
自然って無限に複雑に見えるのに、本当のところ実は単純さを求めているんじゃないのかなって。
私が初めてパイライトを見たとき、そのあまりにも立方体な形に、
こんなの自然じゃありえないって思ったもん。
でも、それこそが自然だったんだよね。

ちょっと大げさになるけれど、現在見えている宇宙には地球にあるものと同じ元素しかないそう。
だからきっと宇宙もその本質は単純なのかもしれない。
そんなことまで考えてしまう鉱物って、やっぱりすごいなって思うんだ。

 

 

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