トップページ > 地球のかけら

地球のかけら

【第87回】デンドリティックアゲート

2012年8月 1日

8月になって夏もいよいよ本番。
夏休み中の学生さん達も、休みのない社会人さん達も、
見ているだけで涼しくなる石があるんです。

デンドリチックアゲート。

この石はまるで高原の森をそのままアゲート(瑪瑙:めのう)
の中に閉じこめたような石。
私は初めてこの石のビーズを見たとき、本当にその中に森があるように
見えて涼しくなるどころか感動してしまったくらいなのです。

87_d1a.jpg

とりあえずはみなさん、先ずは見に行くだけでもいいですから
お近くの石屋さんに足を運んでみてください。

それでは、そのデンドリチックアゲート。
アゲートはアゲートでいいのですけれど、デンドリチックとはなんなのか。

ご存じとは思いますが、石の中にまるで森が閉じこめられている
ような石というと、有名どころに忍石(しのぶいし)という石があります。

87_den01wiki.jpg
※画像はウィキペディアより

森というよりは草に見えなくもないけれど、いちおう森ということにして、
これは岩石の中にマンガン系の鉱物などが染み込んで森のような模様になったもの。
この忍石の英名がデンドライトというのです。
そう、デンドリチックのデンドリはデンドライトのデンドリなのです。

そして、チックというと、これは「~的な」とか「~っぽい」という意味。
ドラマチックとか乙女チックのチックと同じ。

だから、直訳すると「デンドライト的なアゲート」とか「デンドライトっぽいアゲート」って
感じになるんじゃないかな。

まあ、「的な」とか「っぽい」とか書いてはいますが、デンドリチックアゲートは
あくまでもデンドライトの一種だということをお間違えなく。

ちなみに語源はギリシャ語で樹木を表すデンドロン。
鉱物の分野ではないけれど、枝分かれをたくさんしているからということで、
デンドリマーという名前のついたものもあったりする。


名前的なことはこのくらいにしておいて、それでは模様と形の関係について。
 

形っていうと、デンドライトはどれもみな四角くカットされているでしょう。
大きくても小さくても、みんな平べったい長方形の形でね。

87_den02wiki.jpg
※画像はウィキペディアより

それに対してデンドリチックアゲートはビーズやカボッションにカットされている。

デンドライトが四角いのは、あの模様がなぜか2次元的な
平面状にしか入らないところが最大の理由。
丸く削るということはせっかくの模様を削ってなくしてしまうということになる。

だからデンドライトは平面的な形にしかカットできない。
そして壁に掛けたり棚に置いたりして飾る、あくまで絵として楽しむための
ピクチャーストーンという位置づけなんです。
 

ところがそれに対して、デンドリチックアゲートの模様は3次元として立体的に入っている。
その石の表面だけでなく奥の方にもずっとあの模様が続いている。
だから奥まで続くあの模様を全部見せるため、ビーズやカボッション
のように立体的なカットがされている。

こんなカットがされる石はアクセサリーとか宝飾品のあつかいになる。


この2つの石の違いは飾り石か宝飾品かの違いになると思う。


さて、話は変わってあの模様。あの模様っていったい何? って思ったりしません?
鉱物が入っているのならその鉱物にはその鉱物特有の結晶の形があるはずで、
なんであんな樹木のような形になってしまうのか、とっても不思議。
しかも、マンガン系の鉱物がなりやすいとはいうけれど、それ以外にも
ヘマタイト、ホランダイトなど多くの鉱物があの形になってしまう。


フラクタル



これがデンドリチックアゲートのキーワード。

通常、結晶が育つときはその元になる水溶液がゆっくりゆっくり冷却されて、
少しずつ少しずつ育っていく。
しかし通常状態ではなく、水溶液が結晶化してもいいのに結晶になれない
過飽和の状態にあると、結晶はとっとと育ちたくてどうにもならなくなってしまう。

そうなるとどうなるか。
その鉱物の原子はもうどこでもいいからくっついて結晶になっちゃえ! 
って感じで、何だかくっつきやすそうなところにテキトーにくっついてしまう。

ところがっ!
テキトーにくっついていたはずなのに、そのテキトーが実はある法則に従っていた、ショック!


その法則というのが、フラクタルだーっ!


で、えーっと、フラクタルって何かというと、数学ではちゃんと定義されているんだけれど、
正確かつ簡潔に言い表すことは私の頭脳では不可能であります。
なので、ざーぁっと、大雑把にいってみると、「同じ形を無限に繰り返していくと全体と
一部が同じ形になり、それが自然の風景」という感じでしょうか。

あー、やっぱり意味不明だ……。


とりあえず下の図を見てください。

87_f.jpg


ひとつの辺の真ん中に同じ三角形を繰り返し無限に作っていく。
この図形がフラクタルの代表例なんですけど、途中から形が変わらなくなっているでしょう。
これと同じことが起こって下の写真みたくデンドロン状に結晶が育っていく。

87_den03.jpg


他にフラクタルというと、身近なところでは雪の結晶がある。

この写真は雪の結晶のひとつ。

87_snow.jpg

これなんかよく似ているよね。
そんなわけで、デンドリチックアゲートのあの模様が作られていくのでした(強引)。

ただ、立方晶系や正方晶系の鉱物なら、枝分かれの角度が90°、
六方晶系なら30°という見た目の違いがあるから、自分の持っている
デンドリチックアゲートの結晶系を見てみるのもおもしろいと思うよ。
って、ちょっとマニアックすぎるか。


先述のとおり、デンドリチックアゲートはどちらかというと宝飾品というイメージがある。
カメオみたいなペンダントになって百貨店の7階あたりで売られている感じ。
ビーズだってすごくキレイなものばかり。宝飾品と同レベルのものも多いと思う。

あはは、自分の買ったデンドリチックアゲートが宝飾品と同レベルだと思ったら、
涼しくなるよりも心は熱くなっちゃうかもね。

というわけで、涼しくて不思議なデンドリチックアゲートでした。


 

本文の終わりです
ページの終わりです
先頭にもどります
オンラインショップはこちら